2/28/2016

msb ニュースレター February

穏やかな日が続いたかと思うと、また突然の寒波ということを繰り返しながら、はや2月も末になりました。まだ早春の芽吹きは感じられませんが、街の中の公園をよく見ると、暖かい日が続いた間にうっかりと顔を出したのか、2月の初旬でも固い土の中からクロッカスかダファデルの緑の葉が出ているのが見られました。
とにかく春はもうすぐです。

《西田翔冠さん、WAH Center メンバー展に参加》
先月のニュースレターでご紹介したブルックリン、ウイリアムズバーグにあるWAH Center(Williamsburg Art & Historical Center) のオープニングに行ってきました。
この展覧会で西田翔冠さんは二つの油絵の作品を出品されていました。
二つの作品は「オレンジ」と「グレイ」というタイトルで、画面の大半を埋めて存在感をくっきりと表している二匹の猫が描かれています。オレンジとグレイは二匹の猫の名前だそうです。「オレンジ」はオレンジ色の虎猫、「グレイ」はブルーグレイ色の細身の猫。二点とも猫は窓辺に置かれた椅子に座って室内の方向を見ています。そして背景には水が見えます。
「グレイ」の猫の背景は遠くに自由の女神と帆のある船がおぼろげにかすみ、もう一点の「オレンジ」もやはり窓の外は水で、遠くに建造物のある陸があり、水面が光っているので、朝か夕方の光が射しているのでしょう。
猫が主題になっていますが都会の風景でもあるのです。ニューヨーク湾を臨む窓辺にいる猫という設定が、力強い油絵のタッチと相まって、単なる具象画を越えた不思議な現実感をもたらしています。
この作品を見てから、西田さんのウェブサイトに行ってみました。以前の作品はビルディングなどの都会の風景、(ニューヨークの風景だと思います)やはり今回の窓辺の猫のような窓辺に置かれた果物、犬、という室内と、窓の外の都会の町並み、また室内の男女の群れと窓から見える街の風景というシーンを描いています。室内と外という主題が西田さんの内面的なテーマなのかもしれません。普通外の風景は遠くの背景として作家は意識しますが、西田さんの作品の場合、窓の外の風景も室内と同じように力強く描かれ、それがドキリとするような次元の高いシーンになっているのです。
そして、随所に強調されているブルーの影が風景に深さを増しています。
とにかく、見たらしばらくの間、目の奥に焼き付いてしまうような、強烈な個性を感じる作品です。
Yookan Westfieldで検索してイメージをご覧下さい)

《尾曽越 理恵さんのグループ展》
1月のニュースレターでご案内しました尾曽越 理恵さんのグループ展(Art Student
League, Exhibition Program 3人展) が、グランドセントラル駅からハーフブロックに
あるNew York International Arbitration Centerで開かれています。
3人のグループ展といっても、Arbitration Centerの中の3つの会議室にわかれて展示されているので、個展といった感じです。
部屋に入った途端に目に飛び込んできたのは、はっとするような清々しい色彩でした。
58×46インチと、52×42インチの大作で、2点ともGeometric Abstractionの作品です。
少し大きめの作品はSolid Triangleというタイトルで、幾何学的な大小の形で構成されている画面に、右下端から画面の左上に細身の三角形が射るように延びています。画面の下方には一見ビルディングを思わせるような7•8個の小さい長方形がランダムにあり、またシャープな三角形やハードエッジの柱のような形体の後ろには、手仕事的なテクスチュアーの領域があります。それらすべてのフィギュアは砂浜と海を思わせるような、明るいキャメルとブルーの水平線をバックにしていることで、幾何学形体の画面でありながら一種の心象風景のような奥行きを感じます。
もう一点のIn Pinkという作品の方は、淡いグレイッシュ•ピンクのグラウンドの上に、大小様々なサイズの長方形、四角、変形四角などが、楽しげにそれぞれの位置を占めています。いくつかの四角はソリッドですが、他はストライプなどのパターンが入っていて、いろいろな要素があるのに全体に心地よくリズミカルにまとまっています。
Solid Triangleもそうですが In Pinkはことに色に惹かれます。ハーフトーンとアクセントカラーの使い方がとてもいいのです。色彩感覚の豊かさを感じます。
また、グラウンドのピンクには淡いグレーの影がところどころにあり、これも画面に奥行きを見せています。
Rie Osogoeで検索してイメージをご覧下さい)
展覧会は3月16日まで続いていますので、ぜひお出かけください。

New York International Arbitration Center
150 East 42nd Street New York NY 10017
行く前に必ずアポイントメントを取ってください。親切に案内してくれます。
Office  917-300-9550
Cell      646-643-6643  Martyna Hogendorf


冒頭にも書きましたが、今年の冬はみっちりと冷え込む日が何日も続くということはなく、過ごし易い冬ですね。ところがバレンタインズデーは日中でも15度、夜は1度という記録的な寒さでしたが一両日限りのことで、しかも快晴だったので、あっという間に終わってしまった感があります。
それもそのはず、今この国では4年に一度のお祭りの真っ最中です。冷え込んでいる暇などないのです。お祭りというのは当たっていませんが、お祭りとつい言ってしまうほどに国民の多くが政治に参加しているのを見ると、大統領選挙は国民的行事という感じがします。長年アメリカに住んでいて、今更言うこともないのですが、国民の一人一人が国をつくっている主権者であるという意識を、はっきりと持っているということを感じます。
さて、結果はどうなるでしょう。
今年は日本でも昨年秋の安保法制強行可決に続いて、政権は夏の参議院選挙の後に憲法(特に9条)を変えようとしています。私たちは太平洋の反対側からただ傍観するだけ?といらいらもしますが、せめて注意深く見ていくことだけはしたいと思います。
この冬は昨年のように、春を待ちわびるというほど寒くありませんでしたが、やっぱり春は早く来てほしいですね。