6/30/2016

msb ニュースレター June


あっという間に樹々の緑が濃くなり、春と夏を結ぶ初夏の名もあわただしく過ぎて、一気に夏になったような今日この頃ですが、まだ朝夕は涼しく、本格的な夏になるにはもう少し間があるようです。初夏の名残の風を楽しみましょう。

《今年の支部展開催が決まりました》

支部展開催が決まりました。場所はソーホーの中心。ちょうど日本では武蔵美の芸術祭の時期なので、こちらでも盛り上がりましょう。

開催期間:Saturday, November 5th  Saturday, November 19th

場所: Gallery Max New York
              552 Broadway, Suite 401, New York NY 10012 (Prince and Spring St.)
    212-925-7071917-704-1743

応募の締め切りは8/15、参加費は$50です。作品はエログロと汚れるものは禁止。
サイズは昨年の展覧会程度のものですが、来月のニュースレターで改めてお知らせします。 遠方からの作品郵送での参加を歓迎します。また、オープニングレセプションの日に、パフォーマンス、イベントをして下さる方、ご一報下さい。

卒業以来、始めて作品を作り、展覧会に出展する方には新人賞(賞状と副賞)が出ます。皆さん生活があるし、いろいろ忙しくて作品制作は大変です。でも、こんな機会だからこそ挑戦してみましょう。
今後このギャラリーでは毎年、展覧会が出来そうなので、皆様、計画をたてて下さい。

Gallery Max New Yorkのオーナーのマックス藤島さんは東京芸術大学の美術工芸科ビジュアルデザイン科を卒業して1973年にニューヨークへ来ました。広告代理店でクリエイティブディレクターとして長年働き、近年は写真家として活躍していられます。
ギャラリーは今月オープンしたばかりのbrand-new
支部展前にスペースをご覧になりたい方は自由に足をはこんで下さい。行く前に電話をしてギャラリーが開いているかを確認して下さい。

《キノ マホさん、INNERVISIONS: NEW PRINTS 2016/SUMMER のグループ展に参加》

Inter national Print Center New York

508 W 26th Street #5A New York NY 10001
Tel / 212-989-5090

June 16--- September 24, 2016
Opening Reception: Thursday, June 16, 6-8 pm

Tue- Sat, 11am-6pm
(Summer hours / Mon – Fri 11am-6pm)

夏期休暇/August 22nd-September 5th

International Print Center はチェルシーにある版画専門の画廊です。今回、50名の版画家の作品が選出されました。
キューレターはアーティストのDan Walsh
MOMA, PS1 .New Museum   ,Whitney Biennial(2014)に出品する作家で、その選出はなかなかのクオリティーで、充実したショーでした。
キノさんの作品?もちろんピーナッツです。小さいサイズの作品なので、壁ではなく、ガラスケースの中に収まっていました。
作品は二つともボートに乗っているピーナッツ。その一つは赤い花びらの中のボートに乗っています。他の1点は、オレンジ色の池から勢い良く水が噴き上げ、ボートが噴き上げられた水の上に乗っています。
前にも書きましたが、これらのピーナッツたちはもちろん疑似人間です。私たちの回りの世界の中から拾い上げたイメージです。キノさんの観察力の素晴らしさ、想像力の豊かさに感心します。

夏の展覧会のお知らせ

CHRISTIE’S  UNTITLED INSIDER ART SHOW》にキノ マホさんが出展します。

@Christie’s
20 Rockefeller Center. Gallery VI(6)

July 28th, Thursday  August 10th , Wednesday
Opening Reception : Tuesday,  August 2 nd  6pm – 8:30 pm


《日本を代表する前衛芸術家、篠原有司男氏の出版と講演会》

1960年代、ネオダダ、読売アンデパンダンなどで赤瀬川原平、吉村益信らと共に過激で破天荒なパフォーマンスで日本の美術界に衝撃を与えた前衛芸術家、篠原有司男さんが6月に、サンポスト社より、「ザ•インタビューズ、げんこつで世界を変えろ!」を出版しました。その出版記念と講演会が7月8日、日本クラブで開かれます。
私、神舘は本の出版には側面から、講演会は主催者として関わっていますので、ここにお知らせをさせていただきたいと思います。
篠原さんは、芸術活動の他、2014年には第86回アカデミー賞にノミネートされた長編ドキュメンタリー映画「キューティー&ボクサー」でも知られています。
めったにない機会です。皆さま、ぜひお出かけください。

講演会  7月8日(金)6;30pm—8“00pm(開場 6:00時)
日本クラブ2階、ローズルーム
日本クラブ会員 $15 /一般$20
お申し込み、お問い合わせは日本クラブ
担当:本多 21−581−2223 又は



《箱を作る──インテリアデザイナー、レストランオーナー、福田太さんの世界へ向けて広がる夢》

6月の半ば、マンハッタン、8番街の55丁目にある福田太さんの経営するタイレストラン、Chai Thaiへで出かけました。8番街と55丁目のコーナーにあるレストランに足を踏み入れた時に感じたのは、特別高級でもない、けれどもテイクアウトみたいな大衆的というのでもい、後に福田さんから説明されることになる、Comfortという言葉がぴったりの、特にアジア的くさみもなく、かと言ってモダンすぎることもなく、やっぱり一言で言うなら、Comfortというのがぴったりのレストランでした。
「すみません。遅れちゃって」ブルックリンの店から駆けつけた福田さんは見上げるような長身で、まったくおだやかな笑顔が、インタビュー素人の私を途端にリラックスさせてくれました。

夢はここから、ニューヨークへ行こう

福田さんは1990年に学部工業デザイン、インテリアデザイン科を卒業。就職が決まっていた鹿島建設のグループ会社イリア(ILYA)に、卒業前の3月から研修生(インターン)として働き始めていました。イリアは、インテリアの設計、コンサルティング、内装工事や家具の調達を業務としていて、まさに福田さんが勉強してきたことをそのまま生かせる会社で、張り切っていました。
ところが働き始めて一ヶ月を少し過ぎた頃、突然、椎間板ヘルニアを発症してしまいました。8ヶ月の入院。しばらくして会社の方からは自主的に辞退届を出してくれないかという要請の手紙が来ました。
1年後、ヘルイアを治癒した福田さんは、ニューヨークへ行くことを決意します、イリアで知り合った人が北米本社に赴任していて、紹介状を書いてもらい、1991年の6月に渡米します。
1991年に渡米してからの約6年間は二つのアメリカの建築設計会社で働いたのですが、渡米したその年に、早くもグリーンカードを手にしていました。
永住権ロッテリーは現在も毎年行われていますが、ロッテリーが開始されたのは1988年で、始まった当初は一人で何通もアプリケーションを出せるという、ゆるやかなものでした。そしてこの一人で何通も出してもよい、というシステムが終わったのは1991年。福田さんはその最後の年にアメリカに来たのです。
僕の知り合いで10人がこのロッテリーでグリーンカードをアプライしたんですが、いったいその内の何人が当たったと思いますか?
5人?と私が答えると「8人ですよ。ところで僕は何と5000通も出したんです。まあ、僕の友達も似たようなもので、皆でワシントンDCまで行きましたよ」

自分の箱を作りたい、と思うようになる

ラッキーですね。来た最初の年に永住権を手にしたなんて。
それから6年間、建築設計会社で建築、インテリアの経験を積んだ彼でしたが、
「僕にはいつも自分の箱を作りたいという欲求があったんです」
「箱?」
「箱という空間という意味ですね。自分の空間というような」
両手で箱の形を作りながら熱心に箱について話すのを聞いていると、彼のレストランの根源がここにあるような気がしました。
「この頃からレストランをやりたい、という思いがだんだん大きくなってきました」
その頃、福田さんはあるレストランのマネーギャーをやっているタイ人と知り合いにな
ります。そして、このマネージャーとの出会いが彼を一気にレストランビジネスへと
かわせることになったのです。
「アジアン•コンフォート(Asian Comfort)というのが僕のコンセプトで、タイレストランといってもトラディショナルなものではなく、モダンな空間を表現したかった。いうなればヒップ•タイ」
「ヒップ•タイって、ヒップポップのこと?」まごつきますよね。若い人の言うことは。
「そうです。モダンの中にアジアン•コンフォートを感じさせるような、フードだけでなく、レストラン全体からそれを感じさせたい」
とはいっても、若さと心意気だけでは、事はそう簡単には進みませんでした。自分の箱、レストランを持つという夢の実現まではもう少しの迂回の道のりがあったのです。

いつの間にか旅行代理店、でもそれも悪くない。人生は経験。

知り合いになったタイ人のマネーギャーといろいろ頭をひねってはみたものの、何といっても先立つもの、つまり資金が足りない。あれこれと悩んでいたところ、投資家があらわれます。つまり福田さんたちのレストラン構想の第3のパートナーというわけです。
この投資家は自身では旅行代理店をやっていて、福田さんとタイ人の彼は投資家のオフィスの一室を借りて仕事を始めます。
アイディアが煮詰まり、福田さんとタイ人の二人が第3のパートナーの投資家に資金を預けたところで、何と第3のパートナーは全額を持ち逃げしてハワイに“とんずら”してしまったのです。
「えーっ!まるで映画の中の話みたい」と話を聞いていた私は思わず大声を上げてしまいました。
その後タイ人の元レストランのマネージャーが去り、すっからかんになってしまった福田さんでしたが、投資家がそのままにして行った旅行会社のオフィスに座ってると、オーナーがととんずらしたとは知らない顧客から旅行のことで電話がかかって来ます。仕方ないので電話を受けているうちに、福田さんは旅行会社を始めることになっていたのです。(このあたりもコメディードラマです)
旅行代理店、インターフェイスの誕生です。そして新たな日本人のパートナーを得て、仕事は順調に延びていきます。
この会社を始めたのは1997年、そして翌年の1998年には従業員40名の会社にふくれあがっていました。
業務は主に日本からニューヨークのマーケットのリサーチ、不動産会社の現地視察、またその他の企業視察に来る人々のために旅のコーディネートをする仕事、また時々はミュージックツアーなど、エンターテイメントのツアーも企画することがありました。
ところがこんなにトントン拍子でいいの?と思っていたところへ3年後の2001年、アメリカ同時多発テロが起こります。
「旅行者なんて誰も来ませんでしたよ。ニューヨークに住んでいる人たちだって外にでなかったんだから」
「覚えてるわ、お客が来なくてつぶれたレストランもあったわよね」
「それまで大口の仕事をくれていた会社が倒産して、全然仕事が入ってこなくなったんです」
そうして福田さんたちのインターフェイスも解体に追い込まれました。

夢に近づく

仕方なく従業員を解雇し、「これからどうする?」と話し合っている内にパン屋をやろうというアイディアが浮かびます。それにはパン屋で修行するのが一番。
2002年の1月、福田さんとパートナーはニュージャージーにある大手日本食のスーパー、「ヤオハン」の中にあるヤマザキパンに就職しようと出かけて行きました。ところが、人はいらないよ、とことわられてしまいます。
そこでふたたび頭をひねった二人は、旅行代理店のHISに就職することにしました。旅行会社はその前の数年で経験があったので入り易かったのです。
仕事は主に空港送迎の仕事。
「ほら、空港に行くと“なになに様”って書かれた紙切れを持って飛行機を降りて来た人を出迎えている人たちがいるでしょう。あれですよ」
でもこの頃から同時にレストランをやるという方向へ向けて、少しずつ準備を始めて行きます。

2002年の秋、ブルックリン、ウイリアムズバーグに店舗のリースを獲得しました。レストランビジネスへの第一歩を踏み出したのです。旅行会社で働きながら一歩一歩、福田さんの夢へと近づいて行ったこの頃でした。
2003年、ウイリアムズバーグにタイレストラン1号店、Chaiをオープン。
「やったー」一つ目の箱の誕生でした。
それから4年後、2007年には2号店をマンハッタン、55丁目にオープン。その5年後、2012年には「ラーメン、えびす」をウイリアムズバーグにオープンします。その後は勢いづいて次々に箱の数を増やして行きます。
2013年にアジアン•コンフォート、「Baoburg」をブルックリンに。
2015年には「ラーメン•えびす」2号店をブルックリン•パークスロープに、2016年春に、「Baoburg」2号店をブルックリン、グリーン•ポイントにオープンと、矢継ぎ早の勢いでオープンしていきます。
現在建設中のレストランがウイリアムズバーグに二つ、ブッシュウィックに一つあるそうですが、その他、サンフランシスコやフロリダにも話があると聞いてびっくり。
「本当は日本にもアジアン•コンフォートの店を出したいって思ってるんです」
福田さんの夢はつきない。

自分のレストランに、インテリアデザイナーとしても関わっています

福田さんのレストランの特長は?そうです。一つ一つのレストランの内装は全て福田さんの手になるもの、というところです。
「もちろん内装は全て自分でやります。まず全体の設計から始めて、壁などに使う素材選び、それから例えば」
と言って福田さんは私たちが座っていたテーブルのすぐ横の窓を指差しました。
「その窓の枠ですね」窓枠は幅の広い黒っぽい、額縁のような鉄です。
「そういったものから壁に使っている木とか、テーブルや椅子はもちろん、僕が全てを選びます」
「このベンチの布地なんかも?」私は自分が座っている長椅子のダスティーオレンジの布を指さしました。もちろん、という彼に、
「それじゃあ、D&Dビルディングなんかにも行くの?」
D&Dビルディングというのは4月号の奥村泰子さんのインタビューでご紹介したマンハッタン、59丁目と3番街にある、ホームファッションの殿堂、Decoration & Design Buildingのことです。
「大好きですよ、あのビルディング、内装の仕事が始まると入り浸りです。その他にも、いろいろなところへ出かけて行きます。旅行に行った時だって、何か面白いものはないか、材料はないかって、いつも目を光らせています」
そして福田さんは天井を指差しました。天井からは小さな、といっても長さ8フィートくらいの、幅は2フィートくらいの、小さい船が下がっています。材料はグラスファイバーのような、ちょっと透明感のある素材です。
「あれも、いろいろなところを歩き回って探してきたんです」
武蔵美ではインテリア科で学び、その後は建築設計会社で6年間働いてきたのですから、インテリアや建築については福田さんはプロです。
「僕が内装をすべてやるので、建築家は嫌がりますけれどね。でも心から楽しんでやっています」

97%は苦労、でも残りの3%は達成感

「97%は苦労です。でも残りの3%に達成感がある。97%の苦労を通り越した時、心から充足する。ところが一つのプロジェクトが終わってしばらくすると、また次のプロジェクトを始めてしまう。くせになっているって思います」
「そうやって次から次へとレストラン、別の言い方をすると福田さんの箱を増やしていくわけだけど、それ、登山家に似てますよね」
「登山家?そんなこと言われたことないです」
「それはね、福田さんが毎日付き合っている人たちには見えないのよ。毎日付き合っている人たちは福田さんのやっていることや考えている事の細部は知っている」
「そりゃそうです」
「でも私は福田さんのことを何も知らないで今日ここに来た。知っているのは私たちが共に武蔵美という学び舎を共にしたことくらい。福田さんのことを何も知らないからこそ今日のお話を聞いて、逆に福田さんのパースペクティヴが見えるわけ。」
一つの山を登るのは、ほとんどが苦労だけど、一歩一歩杖を頼りに、時には足を踏み外す危険もある。でも頂上に行き着いた時、征服した!という達成感はたまらないと登山家は言う。そして次の山に挑戦する。
レストランという箱は、福田さんの表現の場なのです。もちろん最初に彼のインテリアデザイナーとしての仕事があります。けれどもそれだけでは彼がこだわる箱は完全ではありません。彼にとって、そこがレストランであること。食があること。そしてそこへ人々が集まってくること。食を作る人、それを受ける人。食は人々を結びつけるのです。そうして彼の箱は完成するのです。
多分、福田さんが他の多くのレストランビジネスをやっている人たちと違うのは、空間としての「箱」、すなわち空間の意識から始まっているということだと思います。

自分一人で出来ることは小さい。社会は助け合いがあって成り立っている

2時間のインタビューの中で、6フィート2インチの長身大男の福田さんの口から何度も出た言葉があります。
「自分一人で出来ることなんて小さいんですよ。ほとんどは誰かに助けられてここまで来たんです。ほんとに感謝です。ほんとに自分は恵まれているって思います」
私は、こういう謙虚な言葉を素直に言える人だから、今日の成功があるのだなと思いました。ことにレストランビジネス、その前の旅行会社、どんな仕事もチームワークです。
社会は人で成り立っているのだから、助け合うということが大切。たとえそのビジネスのノウハウの能力に優れていても、ビジネスは成功しません。皆に助けられているという、他者に対するリスペクトがあって成功があるのです。私がそう説明すると、
「そういえば、子供の頃に母から言われた言葉があるんです。“あんたは特別にこれって取り柄があるわけじゃないけれど、お友達に恵まれているところは取り柄だわねえ“」
それって、すごいことですよ。友達に恵まれている、ということは、多くの人があなたのことが好き、あなたに魅力があると感じていることだから。でも実際にはそう簡単なことじゃないんです。友達に恵まれているって。だから、それ、天分ですね、福田さんの。

福田さんのレストランのアドレスです。もし、ムサビ集う場所になれば。

最後に福田さんが持っているレストランのアドレスを書いておきます。別に宣伝をしようというわけではありません。近頃はブルックリンにお住まいの校友会メンバーも多いと思います。一軒を除いてみなブルックリンです。しかも近年アートエリアになっている場所ばかりですので、「ムサビ集う」みたいな場所になったら楽しいな、ということでご紹介します。
また、店内の内装及び家具にいたるまで、すべて福田さんのデザイン、設計ですから、福田さんのアート展示といったこともあります。

Chai Thai Kitchen / Midtown Manhattan                        Chai Thai Kitchen / Williamsburg
930 8th Ave New York, NY 10019                                 124 North 6th St, Brooklyn NY 11249
(8th Av & 55 St )                                                              ( North 6th St & Berry St)

Ramen Yebisu /Williamsburg                                        Rarmen Yebisu/ Park Slope
126 North 6th St Brooklyn, NY 11249                             52 7th Ave Brooklyn, NY 11217

Baoburg / Greenpoint                                                    Riceburg / Williamsburg
614 Manhattan Ave Brooklyn NY 11222                             126-2 North 6th Brooklyn NY 11249
                                                                                        (Grand open will be on August 2016)

Benkei Rarmen /Williamsburg                                        Slurrp / Williamsburg
314 Bedford Ave Brooklyn NY 11249                             314-2 Bedford Ave Brooklyn NY 11429 
(Grand open will be on October 2016)                            (Grand open will be on November 2016)

Docks 22 /Bushwick
22 Wyckoff Ave Brooklyn NY 11237
(Grand open will be on January 2017)