11/30/2016

msb ニュースレター November

 サンクスギビングが終わるともう本当に今年も終わりという気になります。なにしろ残るはあと1ヶ月なのですから。時の経つのは早いもの、光陰矢の如し、と昔の人は言いましたが、過ごした今年を振り帰るのはたいてい12月の末、でも1ヶ月早い11月の末に振り返ってみるのはいかがでしょう。もしやり残したことが見つかったらまだ時間はあります。年の始めに建てた計画を残りの1ヶ月で片付けるとか。本格的な冬の訪れの前にそんなやり残しに手をつけてみると、案外気楽に事が進むかもしれません。いえいえそれどころじゃない、何しろ今年の11月の始めには、世紀の?大混乱があったばかりなのですから。勿論この1年半の大統領選挙のことです。そして、まだまだ白熱の議論があちこちで聞かれる日々が続いていますが、世界はどんな風に変わっていくのやら。変わらないのは世界がどのように変化しようとも、季節は毎年同じように巡り来るということです。歩道を敷き詰める落ち葉の上に雪が舞い降りるのももうすぐです。


《第3回、むさび展が開催されました》


秋晴れの下、第3回「むさび展」がソーホーのギャラリー
Gallery    Max New York
11月5日から11月19日まで開かれました。 

今年の「むさび展」は全体に質が向上したように感じられました。画廊が大変綺麗で作品が飾り映えする空間であったこともありました。また、作品の展示の仕方が上達したようにも感じられました。展覧会では、どのように作品を並べるかということはとても重要です。並べ方、飾り方で良い展覧会空間を作ることが出来るからです
オープニングには武蔵美メンバー以外にも沢山の方々が来場して、皆さん楽しい時を過ごされたと思います。




11月12日の土曜日にはクラフト展が開かれました。
田中よしみさんの陶芸ではお茶碗などの実用品の他、たくさんの素敵なアクセサリーが並びました。
キノマホさんはトレードマークのピーナッツを描いたTシャツ。ティーセットなど。
遊真あつこさんは日本の布で作る折り鶴や小物。
出石薫さんは個性あふれる網を思わせる美しいスカーフ、そしてセーターやドレス。
佳奈ヘンデルさんのイラストレーションはグリーティングカードから大きなサイズまで心休まるメルヘンの世界へ私たちを誘いました
どの方の作品もさすが美大のアーティストの作るもの、個性豊かな作品でした。
平野内美穂さん はビーガンフードのスイーツ。

遊真あつこさんのパフォーマンスがオープニングの日に披露されました。

今回は岸本かえさんが新人賞を授与されました。
岸本さんの作品は2点ともグラフィックな手法で、その内の1点、Hug Me」はガスマスクを付けて、右手にナイフ、左手にフォークを持っている人物の上半身の絵なのですが、何と、ナイフの先は尖って血がついており、フォークもとても食卓のフォークとは思えない代物で、今の時代を漫画風にアグレッシヴに描いていて面白い作品でした。

武蔵美ニューヨーク支部が2009年に発足して8年、1回目から2回目には3年の空白がありましたが、昨年から今年と続いて展覧会を開いたことで、皆さんの制作への意欲が盛り上がったのではないでしょうか。これを機に私たちの会を発展させていきましょう。

田川さんのフォトアルバムのリンクです。ご覧下さい。
I posted some photos from Musabi-ten here:


When you click on "Select Photos" button, "Download" button will show up and you can download for free. 



《12月2日(金)に須田久美子さんのロフトで展覧会の打ち上げを兼ねて忘年会が開かれました。》

忘年会はポットラックで皆さん楽しい夜を過ごしました。これからのニューヨーク支部会のこと、特に展覧会のことなどが話されまし




《フュージョンアーティスト 遊真あつこさんの個展 ─古代への道、永遠の命シリーズ─》
     
どこからともなく風が吹いてきました。その風に乗って声が聞こえてきました。その声に耳を傾けていると、声はしだいに大きくなり、それは一つではなく、沢山の者たちの声だということが分かりました。さらに声の導く方へと行くと、突然明るい、人も、動物も、森も樹々も、花々も、流れる滝は虹を集め、すべての生きとし生ける者が等しく幸福な声に包まれている光景が現れました。
 遊真さんの絵画の世界に誘われて、私は古代への道を辿っていたことを知るのでした。

遊真あつこさんの個展がQueens Community Collage のミュージアム内ギャラリーで9月
15日から10月30日まで開かれました。

遊真さんはご自分のことを「マルチメディア Fusion アーティスト」と言っていられます。
遊真さんが自らをフュージョン•アーティストと言っているのは、曲を作ること、ジャズシンガーであること、パフォーマーであること、その為のコスチュームも自分で作るなど、自分が出来ることをいろいろやってみようという表現することへの飽くなき探求者であると同時に彼女自身が自身の演出家でもあるということです。  
彼女の思想の根本にあるのはスピリチュアルなもの。近年はそれら多くの試みを凝縮したような絵画の作品に、過去の業績を見ることが出来ます。
また遊真さんの作品の特長は手作りの額縁を使っていることです。子供の頃の綱引きの綱ほどもある太いロープや日本の布などを使ってフレームを作ります。「畳職人ですよ、まったく」そんな彼女のフレームは、中の絵はもちろんのことですが、ロープのフレームも立派な工芸作品です。

展示会場がミュージアムの一階で、細長く広い画廊の片側に幾つかの窓があり、そこから野外彫刻が点在している広い芝生が見え、丘のように高くなっている所に建てられているので空が大きく遠くまで広がって遊真さんの作品世界と調和していました。
大きな瞳の火の鳥フェニックスが翼を広げて人々や動物たちに寄り添っています。人も動物も、木や花も等しく生命を享受し、愛の光があまねく降り注ぐ、いのちの歓びにあふれた状景を、遊真さんがこよなく慈しみながら描いていられることが、どの作品からも感じられます。

「卑弥呼さいごの日」は古代の扉の閉ざされた日、そしていつの日か古代への道を辿ってきて
 くれる人を待つ卑弥呼が描かれています。遠い遥かな時から吹いてくる微かな風を受け止めた遊真さんは古代の扉を預かる卑弥呼に出会ったのです。

この展覧会では絵画作品の展示だけでなく、パフォーマンスも披露されました。パフォーマンスのタイトルは「どこから来て 人生、何をして どこへいくのか?」

生きることの喜びは深く、生かされていることの苦しみも深い。
命あることへの神秘と感謝!

我々の起源(origin)を意識して土色系のマスク、コスチュームで表現するという衣装は全て遊真さん自身の手作り。
古代への思いをパフォーマンスとして表現した遊真さんはこのように歌います。
「たった今、たった今、飛んで行きたい。あの空へ。そこは光に輝いて、とこしえがあるという。たった今、たった今、飛んでゆきたい あの空へ。We are all Universe 
たった今、飛んで行きたい、とこしえの宇宙へ、古代への道へ、そこには遊真さんの神話の世界が広がっています。


《鞍井綾音さんのBushwick Open Studio
 95 Starr street Brooklyn
October 1, - October 2,

ブッシュウイックのOpen Studio に行ったのは今回が始めてで、メンバーの依田ご夫妻に勧められてまずBogart Streetのスタジオに行ってみました。5階建てくらいの大きなビルディングはアートの祭典、あふれる人々の熱気に包まれていました。
町工場の続く通りの間には洒落たコーヒーハウスやレストラン、ブティックが散在し、現在のマンハッタンのアートシーンとは違う、70年、80年の初期の頃のトライベッカを思い出しました。
そして鞍井綾音さんのスタジオへ。
うわー!これぞ絵画です。
圧塗りの思い切った画面構成、感情のほとばしる表現、重ねて行く絵の具の手応えを感じながら鞍井さんが制作したのが分かります。抽象的な画面の中に覗く花々や、鞍井さんが飼っている緑のセキセイインコの作品から受けるものは存在への力強い肯定感です。
鞍井さんの英文のアーティストステートメント、I am human first。まず人間であること。Develop a big heart.  そして Painting is the voice of my soul.と続く言葉を視覚で表現しています。
魂の声をおおらかに歌い上げる。そんな気持のいい印象を受けました。


《奥村泰子さんの、Textile Study Group of NY 主催、Yard Works
Textile Study Group of New YorkJuried Exhibition
September 21 –November 16
Durst Lobby Gallery 
1133 Avenue of Americas New York NY

糸、毛糸、布、ファイバーを使って、こんなにいろいろなアート表現出来るなんて驚き、というのが会場に入った時の印象。工芸とも違う、ファインアートです。
奥村さんは4月のニュースレター、「インタビュー」でご紹介した、お勤め先で扱っているファイバーで絵を描く手法で、「Spirit in the Desert」という作品を出されていました。横幅12インチ、縦が36インチの細長いキャンバスに、ブルーとライトグレイを基調とした曲線を描く波のような表現をファイバーだけで表現しているのです。
会社ではこれを徹底的にパンチして表面を平にするのだそうですが、あえてそうはせず、荒いテクスチュアーを残しているのが作品に厚みを感じ、感情を表しています。


《西田翔冠さん、OSSAM Gallery, October Exhibition に参加》
  OSSAM Gallery, “October Annual Art Exhibition
    October 7 – October 23
    300 7th Street Brooklyn New York

今にも何かが起こりそうな、隠れていた物語が現れてくるような、西田さんの作品を見るといつもそんな不思議な思いにさせられます
「宝猫」「すずらん通り」画面の中の重要な登場者である猫の名前らしい、「ぐれい」などの看板が並ぶ夜の都会の裏通りが舞台です
1点はそんな看板の並ぶ通りが先になって遠くなっていくのを背景に、窓際に前足を揃えて座っているグレイの猫がほとんど画面の中央にいます。猫はこの作品を見ている観客の方を向いています。この猫の尾は標準より長く、真横にまっすぐに描かれています。
その無心とも、いくらか寂しげとも取れる目が、都会の夜の風景に潜む物語を暗示しているようです。
もう1点もやはり都会の裏通りの風景です。画面手前は室内で、開け放たれた室内から看板の立ち並ぶ夜の都会の道路が始まっています。室内には椅子の上の白いプードルの他に後ろ姿をみせている頭からつま先まで全身を白とグレイの市松模様に覆われた人物の後ろ姿があります。市松模様の人物といってもそこに立体感はなく、市松模様の陰から今度は立体感のある裸体の一部が覗いています。
裸体の方の脚は床についていますが、市松模様の人物は20センチばかり宙に浮いています。
そして画面左の半分だけ開いているドアの陰からグレイの猫が室内を覗いています。市松模様は立体感のある裸体の影のようですが、これから物語の中へ侵入していくのは市松模様だろうと推測されます。そして事件のすべてをグレイの猫が見ている。そんな物語を想像させる西田さんの絵画力の強さを感じさせる作品です。


《キノマホさん、“MetaMoi 2” グループ展に参加》
キノマホさんのグループ展のお知らせです。今回は今までに発表した以前の作品4点の展示です。もちろん、言わずと知れた「ピーナッツ•シリーズ」です。

MetaMoi2

Center for Theoretical Physics- - Pupin Hall Columbia University 8th Floor


《神舘美会子、Gallery Onetwentyeight, Art and Food Show に参加》
フードをテーマにしたアートショー。しかもFUN(面白み、楽しみ)の要素のあるものというコンセプト。
神舘の作品はコヌコピア(CORNUCOPIA)のアイディアを使い、石膏と白い粘土で作品を作りました。
コヌコピアの起源はいくつかある神話の中でもギリシャ神話が有名で、アマルティア(神格化された山羊)はゼウスを彼女自身の乳で育てたことから、後にゼウスは山羊の角を彼女に与えます。この角は望むものは何でも満たされるというもので、豊穣の角、収穫の円錐とも呼ばれ、北米では角の形をしたバスケットに果物やナッツなどが詰め込み、食べ物や豊かさの象徴となっています。サンクスギビングの時期には食料品店などで見られ、サンクスギビングの飾り物にもなっています。
このところBrainを使った作品を作っているので、角の形のバスケットの変わりに、石膏で型を取ったブレインの中に粘土で創った果物を入れました。

“Food Show”
12月1日─12月30日
Wednesday – Friday  4pm – 8pm
Saturday    -  1pm – 7pm
Sunday      -  1pm-5pm

Gallery Onetwentyeight
128 Livington Street New York NY 10002
F train at Derancy St,  M train at Essex St.  One block North of Delancy Street. 2minuite from the Subway Station by walking.



 《大野廣子さんの二つの展覧会》

ニューヨークでの展覧会ではありませんが、Galaxyや砂漠など、広大なスケールの作品でおなじみの大野廣子さんの11月から12月にかけての展覧会の情報です。

“女流作家の美”展

本間美術館──山形県酒田市
11月10日─12月19日



www.hirokoohno.com
大野さんの作品は、「Tokyoの滝」1993年作 「庭園」1996年作の2点が出品されています。いずれも当美術館が買い上げた作品です。 
この美術館はプライベート美術館としては日本で最も古く、大野さんは1995年にここで個展をされています。
“Borderless: In Perspective”
NYFA ( New York Foundation for the Arts)の企画のグループ展に大野さんの作品が選ばれ、ベルリンのギャラリーに出品することになりました。
詳細は下記のウェブサイトをご覧下さい。




以下展覧会の序文から

"Borderless" は、ニューヨーク、アムステルダム、ベルリンの3つの異なる国の3つの都市で同時に開催される3つのイベントのシリーズです。 David C. Terryによるキュレーション

この展覧会シリーズは、何が国境を定義しどのように国境が定められるかということとともに、国境が抱える過去ならびに現在の課題である国境なき生き方というテーマに焦点を当てています
12月3日─12月17日
ギャラリー  Lite – Haus Galerie 
住所     Mareschstr 4  Berlin Germany      



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